そして、スリムは着陸場所の誤差を100メートル以内に抑える「ピンポイント着陸」に挑み、それを成功させたようだ。従来の誤差は数キロ~十数キロメートルというので、その精度はかなり高い。
すばらい偉業をありがとう。
月への道のりは順風満帆とはいかなかった。この20年余、何度も着陸を検討したもののプロジェクトは実現せず、月開発そのものの継続が危ぶまれたこともあった。曲折を経て、コンパクトな機体として誕生したのが「スリム」である。
成否を分ける最後の20分間は文字通り神頼み。結果の確認には想定外の2時間近くを要した。が、これこそ地球誕生以来、つねに相棒として寄り添ってきた「近くて遠い」天体への挑戦がいかに困難で、それゆえロマンのあるミッションかを物語っている。
日本の科学技術力の低迷がいわれて久しい。ただ、その指標として採用される論文数や大学ランキングが映すのは、資本の力で知を生み出す「アカデミック・キャピタリズム(学術資本主義)」の結果にすぎない。
それらは特許やテクノロジーを生み出す「役立つ科学」を計るものさしにはなる。しかし、科学を向上させる原動力は、それだけではない。はやぶさや今回の月着陸のように、人々の心を動かし、夢を与え、新たな物語を紡ぐ「文化としての科学」の力を軽んじてはならない。
スリムに続き、年内にも日本の民間企業による月着陸の再挑戦が待っている。日本の宇宙飛行士が月に行く計画も浮上する。物語の力で科学を再興する好機が巡ってきた。
どれだけの苦労だっただろうか。
見事に成果を出せたことに祝福を
絶えまぬ努力に感謝を捧げたい。
JAXA探査機が月面着陸 5カ国目、太陽電池は機能せず
ピンポイント着陸とは 月面の険しい地形でも探査可能に
月面着陸、独自技術で「60点合格」 トラブルは挑戦の証
月面着陸という「物語」 科学再興の原動力に
0 件のコメント:
コメントを投稿